レネゲイドウィルスとは、生物に感染してその遺伝子自体を書き換え、超常的な能力を発揮させるレトロウィルスの一種である。
感染者自体は遥か古代より存在しており、神話や伝説で語られる英雄や魔法使いは実はレネゲイドウィルスにより超能力を発症させてしまった者たちであるという説もある。しかし、つい最近までは発症者の数はごく少数にすぎないものであり、それゆえにレネゲイドウィルスという存在が認知されることもなかった。しかし18年前に発生した輸送機撃墜事件により、中東某国の遺跡で発見されてアメリカ合衆国に運ばれようとしていたレネゲイドウィルスが成層圏より全世界にばら撒かれた。これにより世界中に感染者が大量に増えてしまった。感染者の総数は誰も把握できてなく相当数であると思われる。
レネゲイドウィルスは感染しただけでは人体に特に何の変化ももたらさない。しかし感染者が(事故や事件に巻き込まれるなどして)激しい心の衝動を感じたとき、その感情の爆発によりレネゲイドウィルスが活性化し、感染者はレネゲイドウィルスによが引き起こすシンドロームに発症してしまう。シンドロームに発症した者は人間を越えた能力を自在に使うことができるため、オーヴァードとも呼ばれる。
レネゲイドウィルスは人の精神に干渉する性質を持つ。レネゲイドウィルスは活性化するたびに宿主のオーヴァードに対して、オーヴァードに覚醒した瞬間の「心の衝動」を再現しようとする。これが繰り返されるうちに精神は犯され、その「心の衝動」のままに動くようになってしまう。そして湧き上がる衝動を全くコントロールできなくなったオーヴァードをジャームと呼ぶ。ジャームは破壊衝動や殺戮衝動など、自らが持つ衝動を満たすためだけに行動するようになり、人間社会への大きな脅威となる可能性を秘めている。
オーヴァードと人間社会
『ダブルクロス』の基本的な舞台となるのは現代(21世紀)にごく近い近未来の日本である。この時代の日本においては、オーヴァードの存在は世間に公表されていない。これは各国が社会の混乱を恐れたためである。10年以上に渡ってオーヴァードの秘密を隠し続けられているのは、オーヴァードの存在を監視する国際組織が存在しているからである。その組織がユニバーサル・ガーディアン・ネットワーク、通称UGNである。
UGNはオーヴァードとなったものを保護し、人間社会で暮らせるようにすることを支援することを目的に設立された組織である。現在のUGNの方向性としては「オーヴァードは人間社会で能力を隠して隠れ住むしかない」というものであり、オーヴァードに覚醒したものを見つけだし、彼らに対して能力の秘匿を強制的に義務づけさせる代わりにオーヴァードが正体を知られることなく社会で生活できるよう援助を行う。また、人間社会に仇なすジャームを敵対存在として排除するのもUGNの仕事でもある。UGNの活躍はオーヴァードによる人間社会の混乱を未然に防ぐことに大いに寄与しており、各国もUGNに対して秘密裏に協力している。オーヴァードに脅威を感じている各国がオーヴァード殲滅などの軍事行動を起こさないのも、UGNの活躍があってのことである。
しかし、人間を越えた能力を積極的に使って自分の望みを叶えたいと思っているオーヴァードにとっては、UGNは邪魔な存在でもある。そのようなオーヴァードたちが作り出された互助会がファルスハーツ、通称FHである。FHは世界規模のネットワークを持つ非合法組織である。FHの構成員となったものは、別の構成員の個人的な目的を叶えるために自分のオーヴァードとしての力を使うことが組織から義務づけられる。しかし、その代わりに自分の個人的な目的を叶えるためにもFHは最大限のサポートを行ってくれるのである。FHが支援してくれる「構成員の個人的な願い」は善悪を問わないうえに、UGNがジャームと見なしている者達さえもFHでは等しく仲間であると見なしているため、UGNはFHをジャームに加担するテロ組織として受け取っている。
UGNやFHはPCも所属することができる。UGNに所属したPCは自分の超常能力を忌まわしき力として半ば否定しつつも日常を守るためにその力をあえて振るう決意をした者となり、FHに所属したPCは自分の超常能力を肯定し自分の理想を叶えるためならば多少の犠牲は厭わないことを決意した者となる。
ステージ
『ダブルクロス』ではゲームの舞台となる時代や場所のセッティングをステージという言葉で呼んでいる。ゲームは基本的には上記で紹介した現代日本ステージで行うことになるが、現代日本以外のステージ(舞台)もいくつか用意されている。各ステージ専用の特殊なデータもあり、同じシンドロームのキャラクターでもどのステージ出身かで能力は大きく異なることがある。
サプリメントで紹介しているステージには以下のようなものがある。
デモンズシティ
閉鎖された現代の街を舞台にしたスクライド風のステージ。サプリメント「デモンズシティ」「アルターライン」に掲載された。
8年前に起こった事故により住人の大半がオーヴァードとなってしまった現代日本のとある街が舞台となる。外界から隔離され閉鎖された街であり、日本の中で唯一、おおっぴらにレネゲイド能力を使うことが許された街である。
平安京物怪録
10?11世紀の平安時代を舞台に妖怪退治を行うステージ。サプリメント「アルターライン」に掲載された。
平安時代はレネゲイドウィルスの存在など明かされていない時代であり、オーヴァードの能力は陰陽術や呪術の一種として認知されており、ジャームは鬼や妖怪として認知されている。PCは魑魅魍魎が跋扈する京の都を舞台に、夜毎起こる怪異に立ち向かうこととなる。
ロストエデン
MMORPGの世界からの脱出をテーマにした.hack風のステージ。サプリメント「アルターライン」に掲載された。
現代日本でアンダーグラウンドで流行中のファンタジーMMORPG『ダブルクロス』。そのゲームには一つの伝説があった。それは、このゲームをやってる人間の中にはゲームの中に閉じ込められて出られなくなった人がいるというものであった… ロストエデンステージではこの「ゲームに閉じ込められたゲーマー」をPCとしてファンタジー世界で冒険しつつ現実世界への帰還を目指すことになる。PCは「MMORPGをプレイしているプレイヤー」と「ファンタジーMMORPGのキャラクター」の両方を混ぜ合わせた能力で作られるのが特徴。
アキハバラ
メイドカフェなどの風俗を盛り込んだ秋葉原でドタバタ活劇を楽しむステージ。ファンブック「ライブボックス」、サプリメント「アウトランド」に掲載された。
萌えはレネゲイドウィルスが人類に対して引き起こした衝動である、というトンデモな仮説を実証するために秋葉原に大量のエージェントを送り込んだFH。UGNもそれに対抗して萌えの研究のために大量のエージェントを送り込んだ… という設定のコメディ風味のステージである。
烙印よ、ダブルクロスに遊べ。
三田誠のライトノベル『SCAR/EDGE』シリーズを再現するためのステージ。三田自身により作成され、ファンブック「ライブボックス」に掲載された。
マルバタ クロスレ シュール しばざくら アスク たいざん ロスカ チーズ 白爵南瓜 モルガ ユーボ 冬の星座 ライオン いろはに ピーク ハスカ リッペ リーズ ダイヤ 雪の駅 マネタ ファース グラス おくやま スピンオフ スカッド レンジャー レジスタ バルキー 寄居かぶ メキシコ へきぎょく ダージジ パサク はま スティン つるむら 京野菜 コリンズ プール ギミッ デカル マンネリ ハイガイド トークッシ ロンティー サイトバラ メガ最適 ミズム どうちゃく
ウィアードエイジ
第二次世界大戦前夜である1938年のヨーロッパを舞台に冒険活劇を行うステージ。サプリメント「アウトランド」に掲載された。
この時代ではレネゲイドウィルスの存在など明かされていないが、ナチスによって超常的な力の研究がすすめられており、彼らはレネゲイドの力を超能力や魔術や異端科学やオーパーツ(※)という形で理解することで使いこなしている。PCたちはナチスの世界征服の野望を打ち砕くために各国から集まった凄腕エージェントとなり、快刀乱麻の活劇を行うこととなる。
ダブルクロス・リプレイ・トワイライトシリーズの舞台でもある。
※現代日本ステージにおいてレネゲイドウィルスが発見されたのが中東の古代遺跡であることから、古代にレネゲイドウィルスを使った超文明が存在していた可能性が現代日本ステージの時点で示唆されている。
陽炎の戦場
内乱の発生した東欧の小国クロトヴァを舞台に戦場ドラマを再現するステージ。サプリメント「アウトランド」に掲載された。
PCはオーヴァードだけで構成された特殊傭兵部隊「デザートミラージュ」の一員となり、敵軍のオーヴァード兵士との終わりの見えない絶望的な戦いに身を投じることとなる。
The Two Faces of Tomorrow
人類が宇宙進出した近未来の宇宙コロニーを舞台に、エイリアン風のSFホラーを再現するステージ。サプリメント「アウトランド」に掲載。
舞台となる宇宙コロニー「アルバトロス」では、人間を攻撃することを存在目的とする謎の存在「イーター」が宇宙より侵入してきて様々な事件を起こしている。コミュニケーションがとれないばかりか、通常の人間や機械ではいかなる手段でも認知が不可能という不可視の存在であるイーターに対抗できるのはオーヴァードであるPCたちだけである。レネゲイドに関する知識や認知度は現代日本と変わっておらずUGNとFHの対立も変わらず存在しているため、現代日本ステージの延長としても遊ぶことができる。人類を攻撃する不可視の意志である「イーター」は、J・P・ホーガンのSF小説『未来の二つの顔』からイメージソースを得ており、ステージタイトルのThe Two Faces of Tomorrowもそこからとられている。
マスクドヒーローズ
オーヴァードがアメコミや特撮などのヒーローとして人々に認知され、ジャームがアメコミのヴィラン(悪役)や特撮の怪人として人々に認知されている、ヒーロー映画風のノリを再現するステージ。サプリメント「アウトランド」に掲載。現代日本ステージのパラレルワールドとして存在する。
エンドライン
通常のステージでは敵役である組織「ファルスハーツ」が世界を支配したという設定のステージ。サプリメント「アウトランド」に掲載。
このステージではFHが「理想的な支配者」として世界に君臨しており、オーヴァードが人類を導く優位主であるとされ、世界の人々の大半がそれを好意的に受け入れてしまっている。一方、オーヴァードと非オーヴァードの共存を理念とするUGNはすでに壊滅しており地下で抵抗を続けるテロ組織に成り下がってしまっている。
現代日本ステージのパラレルワールドとして存在しており、今までのリプレイで出てきたキャラクターが様々な立場を反転させて登場している。
カオスガーデン
レネゲイドウィルスに感染した動物たちが生息する島を舞台とするステージ。サプリメント「アウトランド」に掲載。PCたとはレネゲイドにより知性と超常能力を持つに至った動物となる。ジャングル大帝やガンバの冒険がイメージソースとなっている